エスコンフィールド小景2023

先日、やっと重い腰をあげてエスコンフィールドに訪問してきたのである。


筆者は2019年に「札幌ドーム小景」という記事を書いている。今回はその続編である。


この記事を書いてからあれよあれよと時は進み、日本ハムファイターズは無能な札幌市を見限って北広島に出て行ってしまった。


ということで大体予想はついていたのだが、2023年6月現在のエスコンフィールドという球場の世の中における立ち位置みたいのを書き記しておくのである。




・チケット争奪戦


チケットに関してはまだ道民のファイターズ熱が冷めていないのでなかなか取りづらい状況であったりするし、値段もかなり強気の設定なのだが、公式サイト「Fチケ」でリセールのチケットが購入可能で正直これ一択といっていいほどこのリセールされたチケットを拾うのがおすすめである。筆者は今回、バックネット裏のチケットを2,500円で回収できた。


また、後述するが駐車場のチケットもリセールで拾えるのがポイントである。


だから、流れとしては、

  1. Fチケに行く
  2. リセールのところに行く
  3. 先にリセールで駐車券が買えるかをチェックする、なかったら観戦そのものをあきらめるか別の試合でリセールの駐車券を探す
  4. 駐車券を確保した後に試合のチケットをリセールで購入する

というのが間違いのない買い方になると思われる。


Fチケに関しては、インターフェースもよくできており、サイトの動きも悪くなく、素直に素晴らしいと思う。




・駐車場


さてさて、問題の駐車場の話であるのだが、悪名高き札幌ドーム時代の駐車場代(2,500円!)はなんとエスコンに移っても健在なのである。これには心底驚かされた。筆者はこの問題を解決するために日ハムは札幌を出ていったと思っていたからである。なぜなら、エスコンフィールドはアメリカの専門の業者が設計に関わっており、MLBの球場のような、デフォルトは車で、球場の周りを囲むように駐車場が作られ、ほぼ全ての人が車で気軽に野球を見に行く(ただしMLBでも駐車券は前売りで買う必要あります)、そんな環境が作られると思っていたからである。もっと言うと、18時くらいにふと仕事帰りの車の中で中継を見たサラリーマンが両先発がいい投手なので「ちょっと帰りにふらっと寄ってみるか」というノリで球場に車で向かう、という環境が整えられると思っていたのである。


事実は全く違っており、そもそも駐車場のキャパシティーは全部でたったの4,000台(!!!)であり、駐車料金は可変らしいが最大3,500円と札幌ドーム時代よりあがっていたりする。札幌ドーム時代と一緒で、野良パーキングも存在するのだが、そもそも何もない北海道の荒野に建てたのがエスコンフィールドである。野良パーキングはあったとしても果てしない遠さのところにしかないのである。だから、車で行くとしたら絶対に何があろうと公式の駐車場に停めるしかない→だとしたら、駐車券が確保できなかったら観戦は不可能、ということなのである。


北海道を知らない方には理解できないだろうが、北海道はとにかくアメリカのような車社会で、家族で一台どころか一人一台車を所有しているような状況が普通なのである。だから、このことを本州から来た球団が未だに理解できていないのは不思議というか頭が悪いと思われてもしかたがないのである。まあ最近は札幌の都市部では車を所有しない若い世代が増えているのは事実なのであるが、それは「あえて所有しない」わけではなく「貧乏だから所有できない」だけでしかないのだ。日本ハムファイターズマーケティングで明らかに失敗しているのは、この球団が明らかにこの「車を持てない若い世代(貧困層)」と「ヒマを持て余してやることのない老人(野球に興味がなくヒマでやることがないだけ)」を未だにメインのマーケティング(言い換えると食い物ね)の対象にしていることである。


球団立ち上げ当初はこのなんのポリシーもなく流行りに乗っかるだけのこの2つのライト層をターゲットにしたマーケティングは大成功していたのだが、札幌ドーム末期にはかなり陰りが見え、魅力の乏しい選手が繰り出すつまらない試合内容とあいまって、スタンドはアクセスの悪さ(そう、札幌ドームだってアクセスは最悪だったのである)もありガラガラだった。今回の移転ではその使えないファン層を切り捨てて、車でふらっと寄ってくれるサラリーマンや、アルヴェル系の車で大人数で乗りつけるバカ家族にマーケティングの層を切り替えるいいタイミングだったのである。


試合終了後の駅に向かう大量の人の流れを車中から眺めて思ったが、球団はこのマーケティングの対象を変えるタイミングを逸して、見事に従来の路線を継続しているのである。これでは正直キツいと思った。飽きっぽい道民気質もあり、この層がわざわざ何時間もかけて球場に通ってくれるのは来年いっぱいくらいであろう。


駐車場は北海道でビジネスをする場合の最も重要な要素の一つなのである。ラーメン屋一つとっても、うまいまずいの前に停めやすい駐車場があるかが北海道では見過ごすことができない成功のカギなのだ。球団がそのことを未だに全く理解できていないのは至極残念である。




・球場グルメ


球場グルメの悲惨さも駐車場と同じく札幌ドーム時代から全く改善されておらず非常に驚かされた。これも駐車場と同じで、ここらへんを好き勝手に改善したかったから、自前の球場を建てる決心をしたのだと思っていたからである。


まず、相変わらず死ぬほど並んでいる部分については札幌ドーム時代とまるで同じか悪くなっているくらいである。「試合前にヒマだから腹ごしらえでも・・・」と思ってもどの店を選ぼうと30分以上並ぶことになるので、筆者のような人間はまいっかとあきらめてしまうのである。この機会損失はなかなか計り知れないと思う。こちらはお金を使いたいと思っても球場が使わせてくれないという構造は頭が悪い以外の何者でもない。


また、薄っぺらいお店のチョイスも「もしかしてペラいアホコンサルがからんでますね?」という感じで非常に芯を食えてない感満載なのである。薄っぺらいラーメン屋や薄っぺらいピザ屋、薄っぺらい海鮮みたいのばっかりで、案の定たいしたおいしくもなく値段はバリ高なのである。例えば、九州ラーメンのようなすぐに麺が茹で上がり大量生産が可能かつうまい、といったラーメンや、カレーのようにご飯をよそってルーをかけるだけで時間をかけず提供可能な食事は全く用意されていないわけで(なんとかカレーみたいのはありますが)、「このハンバーガーを買うには自分の席から大遠征してわざわざこの階のここに行かなければならない」という球場グルメの最大の欠点については何の対策もなされていなかったのである。これには驚かされたしあきれもした。いったい球団は札幌市を出てまで何をしたかったんだろうか、と思わずにはいられなかった。


筆者みたいな人間はこういうウソくさく高いだけでおいしくない球場グルメ(なんというか極めて本州の人目線のセレクションなんですよね・・・)なんか求めておらず、日ハムだけにシャウエッセンのドカ盛りなんかを期待していたのであるが、それもどうやら球場グルメの店舗の一つとしてしか機能していないらしい。エスコンフィールドの中を歩いていて強く思うのは、広大な空きスペースが全く有効に活用されていないことである。そこにウインナー盛りのスタンドを建てまくって、そこでウインナー盛りと缶ビールを売ってくれればそれだけでOKという人も多いだろう。エスコンフィールドは駐車場と球場グルメという札幌ドーム時代の二大欠点を全く解消できていない、というか、解消する気がないようだったし、そのことに筆者はそれなりの絶望を覚えた。この球場グルメのセコくてコスいノリも、MLBの球場のノリとは大きく違うのである。筆者はMLBの球場のようなどでかいホットドッグを回の途中に気軽に買いに行きたいのである、というか、球場内で食べ物を買うというたったそれだけのことに苦労させられたくないのである。




・鳴り物応援


これも札幌ドームでクソだった要素の一つであるが、このタイミングで鳴り物応援や応援歌や応援団を禁止すればよかったのだが、見事に引き継がれている。ただし、応援団の席は内野席の2階と3階に集約されており、外野は一般人が座って観戦する席になっていて、これは良くも悪くもという感じである。今回、筆者の席はバックネット裏だったので、エスコンでは応援団との距離が近く、非常に迷惑だった。


もう時代は変わって応援団や応援歌は観戦に必要ではないだろう。これについても球場が移転されるタイミングで球団はすっぱりと切り捨てればよかった。メジャーの雰囲気を真似したかったのならなおさらである。素人の集団カラオケを聞かされても何も嬉しくないのである。また、クソみたいな歌詞の内容もうんざりするだけでしかない。筆者みたいな人間は別に夢とか希望を選手に求めて野球観戦なんかしてないのである。ただ単にアスリートとしての真剣勝負を生で見たいからわざわざ球場に足を運んでいるのである。渾身の160kmのストレートを打ち返したり、難しいバウンドを処理する守備なんかを見るのに、アホみたいな集団カラオケはただただ邪魔なのである。


昭和のノリを未だに引きずっているような応援団や応援歌には本当にうんざりである。もういいのではないだろうか。


ちなみに飽きっぽい道民は既にきつねダンスには何の思いもないらしく、きつねダンスが場内でかかりチアが踊っている時間にはほぼ全員が微動だにしていなかった。さすがにゴリ押しも限度を超えると通じないということだろうか。




・エリアの出入りがあまりにもガバガバ


各座席エリアの出入りがあまりにガバガバなのにも驚かされた。そもそもチケットをチェックされることは入場時以外にはない。これにはいい面もあるのだろうが、これのために頻繁に通路や階段を座席の位置と関係ない人が行き来するので、観戦の視界を遮られまくるのには心底閉口した。別にきっちり制限しろとは言わないが、客のほとんどがそもそも野球というスポーツが好きなわけではなく、ただ単にヒマだからとかみんなが好きだから自分も好きになってみたという人ばかりなので、だまって野球を見るわけでもないので、ほぼ全ての人が暇なし席を立ってエリアを出入りするのである。それに加える形で、他の席の人たちが関係ないエリアに出入りするので試合に集中して観戦を楽しむというはなかなか難しかった。というか、そういうお客を大事にする気が球団にはないようで、これもMLBの球場とは大きくノリが違うところである。


まあこれはレアケースだとは思うのだが、筆者は今回このガバガバを利用して各エリアを徘徊してかわいい女の子を物色するナンパチームみたいのも目撃した。うるさいしバカっぽいしで本当に迷惑である。こういう田舎の一コマを見せられると観戦のテンションは一気に下がってしまうのである。




・そんなエスコンフィールドの今後


ということであまり期待せずに行ったエスコンフィールドであるが、予想よりもダメかなと思わされることが多く、正直未来は厳しいなと感じた。そもそも、野球が本当に好きというファンが最初から少なく(これは商売と考えると悪いことでは決してないのだが、巨人ファンなんてほとんどがライト層だし)、この層がいつまで公共交通機関を乗り継いでせっせと球場に通って、おいしくもない球場グルメにお金を落としてくれるのかは疑問である。球団にはスター選手が乏しく(ちなみに清宮選手大好きです、バッティングもだがサードの守備があんなに上手いとは)、やっている野球は極めて退屈であり、かつ、弱い。だとしたら盲目的な何も考えずに応援してくれるファンがなおさら必要ということなのか・・・。


ほぼ札幌といってもいい(これも北海道を知らない人から、誤解されてますよね、札ドからエスコンは車で30分の距離)北広島に移っただけで、札幌の一部の層は既に巨人に回帰する動きを見せていたりする。一回完全に裏切ったくせにまた戻るのかという節操のなさにもあきれるが、道民気質というのはそんなものである。その裏切った元巨人ファンの世代(つまり老人)はお金をもっており、物心ついた時には球団が存在し生まれつき日ハムファンとして育った若い層は貧乏で人数も少ない。この人たちから搾り取れるお金というのは非常に限られているのである。そう考えると、理屈の上では、エスコンに移った日ハムの未来はかなり厳しいと予想できるだろう。伸びしろがないと言った方がいいだろうか。高額なチケット(+車の人は高額の駐車券)を買い、アクセス最悪の球場に公共交通機関を乗り継ぎやってきて、高額でおいしくない球場グルメを購入し、しごく退屈な試合を観に来る、というこのざんないルーティンをライト層がいつまで続けてくれるのかは、巨人を裏切り、コンサドーレを裏切り、そして、あっさり日ハムに鞍替えしたポリシーのない道民の気質を見てきた筆者としては、未来や伸びしろがあるように思えないのである。


今回実際にエスコンフィールドを訪れて筆者が確認できたのはその未来のなさをしても球団が新しいファン層を開拓したりする必要性を感じてない、ということである。つまり、現状のままでも十分ビジネスとしてはペイしているし、球団が存在する意味を有しているということなのであろう。ただし、プロスポーツとしての魅力をもう少し追求するにはもうちょっと頑張ってもいいはずである。もうちょっとファン層を拡大して現状より収入を増やし、岩盤支持層をより厚みのあるものにしていけば、例えば助っ人外国人として今よりもずっと能力の高い選手を購入することも可能になるはずである(今の外国人選手はなかなかに厳しいですよね・・・)。そんなもったいなさを感じ、わざわざ札幌市や札幌ドームを捨てて北広島まで移ってやりたかったはこれなの?と思ってしまったというか、思わされてしまったというのが今回の訪問の感想なのである。