ウクライナ戦争シリーズ06:自衛隊は予想以上にダメだこりゃという話

さて、ウクライナ戦争はそろそろはじまってから(2月24日にロシア軍が侵攻開始)、2ヶ月半くらい経ったところである。戦況は以前紹介したliveuamap.com英国防衛省のツイッターで見るとわかりやすい。総力戦になると言われていたウクライナ東部での戦闘でもどうやらウクライナ軍がかなり盛り返して、ロシア軍を国境側に押し返しているらしい。


ゼレンスキーは5月14日にハリコフの奪還を宣言した。



liveuamap.comで見てもそれは明らかで、ロシア軍は立て直しのために一度撤退したのだと言われているが、どうも兵士の士気は相当に低いらしく、この状態では何度戦いを挑んでも西側の最新鋭の兵器の餌食になってしまうだろう。


ロシア兵の士気の低さは、以下の記事に詳しい。



つまり現状をシンプルに分析しようとすると、「ロシアが勝つのは相当に難しくなってきている」といった現状なのだろうと思う。経済制裁の影響でロシア軍の兵器は底をついていくだろうし、対照的に、ウクライナ軍の兵器はレンドリース法によりこれからどんどんフレッシュなアメリカ製の武器が供給されるという違いが大きすぎる。ただし、この分析にはある前提条件があって、それは「ロシアが核を使わなければ」というのが絶対条件になる。今行っているどの戦闘においても、なりふり構わずに核爆弾を使用すれば、ロシア側はこれ以上の兵士や兵器を失うことなく、戦況を大きく有利に導くことができる。


頭が痛いのは早い話がそれしかもう勝つ方法がなくなりつつあるということであり、そして、そんな状況をコントロールできる相手は米国しかいないということである。米国側はどうやってバランスを取ろうとしているのか。それとも一発撃たせるのか。確かに一発撃ってしまった瞬間にありとあらゆる攻撃の正当性をロシアは完全に失い、未来の歴史の中で永久に敗北者として語り継がれることになってしまうが、そのステータスをロシア側に与えるための代償はあまりに大きい。


さてどうするのか。





ちなみに当ブログではおそらく日本最速といってもいいくらいの速さで、昨年2021年の12月23日にロシアのウクライナ侵攻の確度が極めて高いことを書いている。



また、「プーチンが狂っている」等の日本のアホ専門家がほざいていることが大的外れのトンチンカンであることも書いてきた。これは今も毎日ずっと続いていることで、昨日も今日も、そして明日も無能な専門家共が薄っぺらい分析をメディアでほざくのであろう。




この不要なノイズは、現代社会では一次情報に簡単にあたることができるようになってきているので、余裕で回避できる。インターネット様々である。


そして、プーチンは昨日くらいから、「白血病なのでは?」という情報が流れてはじめているが、流しているのはどれもいわゆるタブロイド系の媒体である。日本人は海外の高級紙とタブロイドの区別がついていない人が多いが(まあ、名前が似ているというのはあるが・・・)、安易に信じていい情報ではないように思えるし、裏付けなど永久に取れない類の情報であろうから、語ってもあまり意味がなさそうだ。「そうあってほしい」という願望が含まれてしまっているように見え、この手の情報に左右されるのは極めて危険である。


それよりも以前書いたように彼のプライドを傷つけず、体制もある程度は保障して、収束に向かわせるのが最善の策のように見えるが、先日5月13日にアメリカのオースティン国防長官とロシアのショイグ国防相の電話会談が行われたようだ。



「もっと早くやっとけや」と言いたいところではあるが、とりあえず開催されたことはかなりの前進である。6月頃にはロシア軍の兵器の供給が途絶え、軍が破綻する可能性もあるらしく、両国の駆け引きの末に停戦が行われるのであれば、これは望ましいことである。





ただし、この電話会談が行われる前には、なかなかかぐわしい動きもあったので、そちらもフォローしておこう。


まず、イギリスのジョンソン首相は4月9日に特に行く必要もないのにキエフを訪問し、多額の現金と武器を提供することを約束している。



そもそも、ビデオ会議で余裕で済ますことのできる内容をわざわざ対面で行う必要があったとは思えない。また、キエフの街中を闊歩するシーンも、過剰に演出されていたようで極めて不自然であった(とはいえ、公開された映像は非常にクオリティの高い素晴らしい出来であったが)。おそらく、アメリカ側に「俺らは行かないからお前行ってこいや」と言われたのではないかと思ってしまうほど不自然かつ突然の訪問であった。ただし、こういうイギリスの狡猾なメディア戦略に騙されやすい世界の民の反応は「さすがジョンソン!」「かっこいい!」みたいなのがほとんどで、中身のなさはともかく、訪問自体は大成功であったと判断してよさそうだ。


だがしかし、イギリスという国は全ての国と仲良くし、同時に全ての国と敵対するのである。


以下の映像でも議題にされているが、ボリス・ジョンソンはロシアのオリガルヒの資産凍結に対して18ヶ月の猶予期間を与えている。



この質問している労働党の議員は「18ヶ月って言ったら、来年(2023年)の8月だよ?」と質問しているが、そんなわかりきっている出来レースにツッコミを入れることほど虚しいことはない。結局、イギリスは今までの歴史と同じく、今回もロシアとウクライナ両方の味方をしているのだ。「ジャップのアホ共、これが外交だよ」と言わんばかりの天才的な手法である。だから、少なくとも発狂状態に陥ったロシアがカリーニングラードから撃ってくるだろうと言われている核は、何があろうとロンドンには落ちないのである。





また、このイギリスのアクション(アメリカが裏にいてやらせたような・・・)に呼応するように、アメリカのブリンケン国務長官が、4月16日に「戦争は年内いっぱいくらいまで続きそうだ」と発言したと報道されている。



まあ、「武器いっぱいあげるんだから、せっせと戦ってもらわないとね」ということなのであろうが・・・。


これは、5月13日のオースティン&ショイグ会談で潮目が変わったように見えるが、アメリカの保守系メディアでさんざん叩かれていたように、アメリカの現政権はできることなら戦争の終結を先延ばししたかったのだと推測できる。


まあ、兵器も売れるし、ロシアは弱体化するし、ついでに中国にも難癖つけれそうだし、アメリカにとっては戦争が長引けば長引くほどおいしいからである。


ここらへんの状況を見る限り、やはり米英は戦争が終わってほしくないのだと、少なくともちょっと前までは強く思っていたと読み取ることができるであろう。





また、必死に自分の世界における立ち位置をレペゼンしていたフランスは、ついにゼレンスキーからマクロンが無能呼ばわりされることになった。



ゼレンスキーはマクロンプーチンと行った会談を「無意味」と言ったのである。これは非常に的確で、やってる感だけを一生懸命出していた無能をきちんと当事者が戦争中に評価したのは素晴らしいことである。


マクロンがすごいのは、このゼレンスキーとマクロンの電話会談で「プーチンのメンツってのもあるから、今実効支配されている地域に関してはあきらめちゃってよー笑笑」と提案したことである。古代中国の時代から言われていることであるが、事を成すには地の利や時の利が必要であり、今回のマクロンの行動にはそういった利の部分が全て欠けている。だからこそ無能に見えるのである。


このマクロンのアクションはウクライナ側の人たちからSNSでボコボコに批判されている。「余計なことをする無能」と「何もしない無能」のどちらがいいのか。それを考えると確かに岸田の方がまだマシのように見えてしまうから不思議である。





という長すぎる前フリはともかく、今自分が日本にいて強く感じている/感じはじめているのは自衛隊のダメぶりである。というか、自分はもうちょっと自衛隊が役にたつ素晴らしい軍隊だと思っていたのである。兵器は最新で練度も高い、いざとなったらアメリカ軍と一緒になって余裕で相手を殲滅しまくる、それが自衛隊の一般的なイメージであるからだ。



ただし、それは今回のウクライナ戦争でメディアに出てきて発言している元自衛官のしかもかなり高い階級のみなさんの発言を見て完全に変わった。彼らは極めて軍人的ではなく役人的な人物だということがわかったからだ。



まず彼らは日本の学術/研究期間の人間と同じように、「開戦なんてありえない」と発言していた。これだけ今回は今までと違って本気だというシグナルがあちこちにあったにも関わらずである。そして、決定的にダメだとも思ったのはこの期に及んでいつも国際法について嬉々として語りだすことである。メディアで彼らが語る時に注目してほしいのだが、無能な人間ほど「ロシアの行動は国際法に違反してー」と説明しはじめるのである。そしてこんな人間が多すぎる。いかにも、責任逃れが大好きどころかそれが人生の主目的になってしまっているジャップらしい志向である(見ててマジで泣けてくるけど)。だが、それが自衛隊という実質の日本軍の基本姿勢であれば限度を超えて完全にNGであろう。


国際法なんてそもそも大国のいい加減な理屈でしかなく、正しく運用されていない事例なんていくらでもあるのである(イラク湾岸戦争なんかがいい例で)。もっと簡単に言うと、「例えば、元自衛官のあなたの幼い娘が仮に他国に誘拐されたとして、国際法に違反するから奪回をあきらめるのですか?」ということである。そして彼らの答えはきっと「国際法を遵守し、適切に対応する」ということなのであろう。これでは、暴力装置としての機能を果たすことはできない。鈍感な自分は拉致問題がなぜ解決しないという根本的な理由を今回はじめて理解したのである。


例えば、本当に国を思い「何よりも人間として正しいことを行う」という思想が根底にあるのであれば、某国が核施設を建設中に決死隊を募って攻撃する、とか、政府や上官の命令を無視して拉致被害者を取り戻しに行くとか、なんでもできるはずである。


実際に、イスラエル国際法を完全に無視して1981年にイラクの建設中の核施設を空爆している。



そういう意味では、自衛隊という組織は今回ご活躍されている退役したOBの方たちの発言を見る限り、極めて頼りなく感じてしまうのである。


もちろん軍人としての戦い方のプロトコル(=それが国際法)は大切だが、もし頭の上に核爆弾が飛んできたのであれば、国際法なんて二の次なのはどんなバカでも理解できる自明の論理である。そこの認識が軍として甘すぎるように感じられた。繰り返すが自分はここまで自衛隊が骨抜きの組織にされているのかを全く知らなかった。


そんな観点でみなさんも今後の報道を注視してみてほしい。彼らが国際法について話しだす時、「国際法ってこういう決まりがあるんですよ、みなさん知らないでしょー」と嬉々として語りだす光景を見ることができるはずである。そんなルールなんて現場では何の役にも立たない。ケンカにルールなんかなく、戦争は勝った方が常に正しいのである。世界はブチャの虐殺でヒステリーとも言える過剰な騒ぎ方をしているが、あれが虐殺というのなら、広島長崎の原爆2発では50万人の非軍人が殺害されているが、これは世界の歴史では大虐殺(ジェノサイド)という認定をされていない。戦争というものは勝ちさえすればいいのである。




再度繰り返すが、もし日本がウクライナのように他国に侵略攻撃された時にそれが国際法に違反しているかどうかなどはどうでもいいのである。もっというと、戦うという職業に就いた男ならもし自分が守らなければならないものが傷つけられたのなら、過剰に憤怒し、涙やよだれを垂れ流し、即座に敵に立ち向かう以外のリアクションはないのである。そして、それは拳を振り上げた相手にだけでなく、拳を振り上げようと計画している相手に対しても状況によっては成されるべきである。自衛隊の現状の精神性は極めて危険である。これで国なんか守れないし、自分のような人間でさえ、そんなぬるさに危機感を覚えるのだから、敵となる国の軍人たちは彼らの弱く幼稚で、文官的な発想を見て、手を叩いて喜んでいるはずである。


*2022年05月24日追記:

筑波大学の中村逸郎先生が、MBSテレビで「プーチン戦勝記念日の演説は事実上の敗北宣言だった」という解説をされています。これはロシア語に堪能な先生ならではの極めて独自性の高い視点で、非常に興味深く拝聴しました。

もちろん地上波の情報をそのまま真に受けることは危険ですが、中村先生はそんな日本の終わってるメディアの状況も余裕で理解した上で、豊富な経験と知性に裏付けされたご解説をされているという印象です(ロシア側の人間として非常に勇気のある行動を取られているという印象は、なんだかよくわからずおちょけているだけの若い世代のエースと非常に対照的です)。

よく考えたら、経済制裁が効きまくってロシアの国としての命運がそんなに長くないのは当たり前で、6月あたりから本格的な自壊がはじまるような気がします。そうなると、核がどうのなんて話にまでたどり着くことも出来なくなり、勝手に現体制がメルトダウンしていくわけで、世界という視点で見るとそれが最も望ましい結末になるのですが・・・。