ウクライナ戦争シリーズ10:1周年だよね・・・、という話

というわけで、若干ではなくかなり怒っているのである。怒り心頭である。ウクライナ戦争は2月24日に開始からちょうど1年を迎えるわけで、我らがジャップランドでも特集番組なんかが作られているのである。


だがしかし、その内容は相変わらず正義の見方を装ったクズのプロパガンダといった体で、例えば某村で起こった虐殺についてのドキュメンタリー番組では貴重な虐殺の証拠を提供してくれた情報提供者の方の顔をマスクしないでそのまま放送しているのである。今は戦時中なのである。敵からしたら迷惑な密告者でしかないので、この情報提供者の方の命が狙われる可能性は十分にある。少なくとも、全世界に向けて顔をさらす必要性は全くなかった。あまりのひどさに自分は驚かされたが、それ以上に、ジャップの一人としてウクライナの方に本当に申し訳ないという気持ちになった。


こういう卑劣なやり方で少しでもロシアに有利になるようにセコくポイントを稼ぐようなことをやっているのがジャップメディアであるし(これは対日本に対しても同じですね)、そこに日々馳せ参じて正義の見方を演じつつ、その非道なプロパガンダに加担しているのが無能専門家達である。1周年ということで、これまでの戦況を振り返る番組でも、専門家のくせに核心をつけずトンチンカンなコメントをかましているクソ専門家ばかりが目についた。なので、しょうがないので自分なりにささやかにまとめを作ってみたのが本稿である。少しでも、ウクライナの方に向けてお詫びの気持ちを込めて、こんなクソばかりがジャップではないんだよ、と言いたいのである。




1. 戦争のきっかけや目的を正しく理解するのがまず大事


ジャップが議論する時によくあることなのだが、まず議論の前提が間違ったまま先に進んでしまうことが多いのである。


ロシアがウクライナに攻め込んだのは、ネオナチがどうこうとか、何度引き止めても西側に向かって進んで行こうとするウクライナに寂しさを感じた、とかではない。


諜報機関が乗っ取られて、アメリカの諜報機関の下に入って、そうなってしまった故に、ウクライナが対ロシア工作の最前線になってしまったというのが非常によろしくない、というのがまず第一の理由である。プーチンはその諜報機関出身というキャリアを利用して、今の地位に上りつめたわけである。だから、ウクライナが対ロシア工作の最前線になっていることだけは許せないのである。この状態を許容したまま死ぬわけにはいかなかったから、今回の戦争をはじめたのである。


そして、第二の理由は何がどうあろうと、クリミアという場所を手放すことはロシアにとってはありえない、だからそこを死守しなくてはならない、ということである。ロシアにとっては地理的に不凍港を保持することは極めて重要なのである。また、クリミアの地政学的な位置も、地図で見れば一目瞭然であるが、素晴らしい位置にあるのである。特に、ロシアとしては黒海艦隊が地中海に出ていくルートが重要なわけで、これを失うことはイコールロシアの世界に対する軍事力の影響の大幅な低下を意味するわけである。プーチンが「失うくらいなら核を使う」と繰り返し述べている(マイダン革命の時からはっきりと言っている)くらい、クリミアはロシアにとっては国家の生命線の一つなのである。


だからこそ、今回の戦争の目的は、「ゼレンスキー政権を倒してクレムリンの傀儡政権を樹立すること(目的1)」であり「クリミアを未来永劫ロシアの領地とするためにドニエプル側の東側を制圧する(目的2)(=少なくともドンバス地方あたりから領地を制圧していって、クリミアまでのルートを確立させる)」という2つが目的なのである。ネオナチがとかアゾフがとかロシアが繰り返し主張していたのは、このルートの途中での目障りな難敵が彼らだったからにすぎない(マリウポリは途中のルートの要衝)。



*ということに関しては、このシリーズの1番最初の記事で記したとおりである、という意味ではやはりプーチンは狂っていないし、目的は非常に個人的かつ、彼が近視眼的にロシアにとってもこれだけはやらなければならないと思いこんでいるのであろう


だが、目的1の「ゼレンスキー政権を倒すこと」については、事前に情報が漏れていたのか、ベラルーシからのキエフへの奇襲攻撃は失敗し、特に空港の占拠を精鋭特殊部隊が試みたらしいのだが、これはアメリカとイギリスの特殊部隊が撃退したという情報がある。とにかく、諜報機関を取り戻すという、一番の目的は戦争開始直後の数日で達成不可能が決定してしまったのである。これは今後もおそらく達成不可能で、それは核を使おうとも無理だと思われる。だからこそ、今回のロシアにはもう勝利の可能性はないのである。


そして、目的2の「ドニエプル側の東側を制圧する(=少なくともドンバス地方あたりから領地を制圧していって、クリミアまでのルートを確立させる)」というのは既に達成されている。なので、ロシアは目的1はあきらめて、目的2を達成した時点で、停戦をウクライナ側に打診したわけである。だがウクライナ人、ウクライナ軍、そして、ゼレンスキーはロシアの想像以上に強靭で、そんな停戦の誘いを一笑に付し、徹底抗戦の姿勢を全く崩さなかった。自分が見聞きした中でも、「ロシアに妥協した態度を見せて停戦したとしても、いつか必ずやつらは再度、我々の領土を侵略しようとするだろう、だから今戦うしか選択肢はない」というのが現地の意見で、ウクライナ人の間での共通認識なのだ。


ということで、現状については「目的はある程度達成して停戦したいロシア」vs「西側から兵器の供与を受けて、2014年に奪われた領土を取り返すまではぜってー辞めねえという戦う気満々のウクライナ」の両国のせめぎ合いになっているというのをまず理解するのが必要である。これを理解しないで、先に進もうとするから、全体像がぼやけで、クソプロパガンダが意味があるように見えてしまうのである。注意が必要である。




2. これまでにどういうターニングポイントがあったのか


これについてもピントをはずした解説が多くてうんざりさせられる。特に、ノルドストリームの爆破が戦況の大きな転換点になったのは間違いがないが、それについてはどのメディアも専門家も鬼スルーなのである。


主な転換点を挙げると、こんな感じか、

  • ゼレンスキーが逃げなかったこと
  • ジャベリンが活躍しまくる
  • HIMARSで逆転
  • ノルドストリームの爆破でドイツが観念

順を追って掘り下げてみたい。


  • ゼレンスキーが逃げなかったこと

これに関してはそれなりにナゾである。ヨーロッパ、特にドイツは「48時間以内にロシアがキエフを制圧して、ゼレンスキーは亡命することになる」と考えていたらしいし(詳しくは下記記事↓参照のこと)、事実アメリカでさえゼレンスキーにウクライナからの脱出と亡命を打診したらしい。



既に上述したように、ウクライナ諜報機関アメリカの下に入るほど密接な関係のある、日本までとは言わないが属国的な国である。なのに、なぜ今回ゼレンスキーは逃げないと決めたのか?そして、なぜそれをアメリカが許容したのか?については、非常にナゾである。どういうやり取りがあって、首都に残って徹底抗戦するという結論に至ったのか。結果は大成功であったわけで、彼の決断がロシアの敗北を決定づけたと言ってもいいくらいなのである。

  • ジャベリンが活躍しまくる

これは戦争初期に大きくジャベリンが活躍し、ロシアの戦車を破壊しまくって、ロシア軍の進軍を遅らせることに大きな戦果をあげたのである。このジャベリンのおかげで、世界は「あれ?ロシア軍って意外と弱くて頭悪い感じ?兵器の質も西側とロシアで全然レベル違くない?」と気づくことができたのである。外野の我々でさえそう思ったのだから、ウクライナ軍の方たちはもっと「いける!」と思ったであろう。

  • HIMARSで逆転

これは、どこでも同じことが述べられているが、昨年7月頃にアメリカより供与されたHIMARSが戦場では圧倒的なゲームチェンジャーになったのは間違いないのである。押され気味だったドンバス地方の戦闘でHIMARSが実戦投入されてから、ウクライナ軍は互角かそれ以上に戦うことができるようになったのである。これ以降、ロシア軍は常にHIMARSの射程距離(80km)を常に意識して戦わざるをえないことになった。クリミア戦でも一部使用されているようで、ロシア軍は基本、射程距離外に陣地を取るようになった。

*ということは、ATACMSが供与されたら、もっとクリミア戦は楽になるはずなのですが、これはクリミア取り返し切っちゃうと核打たれたりするかもしれないので、アメリカがちょっと待ってねーと言い続けているのだろうか・・・

  • ノルドストリームの爆破でドイツが観念

個人的にはこれが一番のターニングポイントだと考えており、なぜか、ジャップメディアでは全く触れられないトピックである。ノルドストリームを強制的に使用不可能にすることで、ロシアのガスをあきらめきれず優柔不断な態度を見せていたドイツが観念して、急に西側の各国と足並みを揃えるようになったのである。これが、最終的にはEU各国のレオパルト2の提供へとつながっていったのだ。



*ノルドストリームに関してはこちらの記事でささやかですが触れております


この爆破については、誰がやったのかはみんなわかっているのにあえて話題にしない、という雰囲気があったのだが、今年になってベテランジャーナリストのSeymour Hershさんがアメリカがやったとボコボコに暴露して話題になっている笑。



こういうジャーナリストがいることがジャーナリズムなど存在しないジャップランドに住む自分としては心底うらやましかったりする。



↑これがその記事。


ちなみに、この記事はSubstackというオープンレターサイト(日本でいうメルマガ作家が集まっているサイトと考えてokです)のHershさんのページで公開されており、こういったクソ偏向メディアの検閲を受けないでジャーナリストと読者を直接つなぐ仕組みが機能しているのも実にうらやましくある。




3. では今後どうなるのか


これについては、簡潔に述べると「ロシアという連邦国家は(ユーゴスラビアのように)バラバラに解体される」ということになるのはほぼ間違いない。


順を追って話すと、

  • ロシアの勝ちはない

何度も書いているが、ゼレンスキー政権を倒して、親露政権をウクライナに作るのが今回の戦争の一番の目的である。そして、それはよっぽどのことがない限り、もはや不可能なのである。核を使ったって、ゼレンスキー政権が倒れることはないし、ウクライナ人が民主主義を捨てて、ロシアの恐怖政治を望むことは当たり前だがありえないのである。ロシアが勝つことは何があろうとありえないのが現状である。例え、核を使ったとしても人類が滅亡するのでロシアが勝つことにはならないわけで。

  • 核を使うかどうか

使うかもしれないし、使わないかもしれないが、発射する際にそこを爆撃されるという話もあり、とにかく核を使うメリットは日々薄れてきている。


使うとしたら、昨年9月のハルキウでのロシア軍の大敗北や、その後の撤退の失敗の際に使うべきだったというのは、かのカディロフが言ったとおりである。


もはや、核を使おうと大虐殺が行われるだけで、ロシアにはあまりメリットがないし、一部識者が主張していたザポリージャ等の原発を破壊してロシアとウクライナの間に立ち入れない緩衝地帯を作る、というのもあまり現実的ではなくなってきた。ちなみに、ザポリージャ原発は今回の戦争の目的2の「クリミアまでのルートを確保する」の明確な妨害になってしまうので、そこを立ち入り禁止区域にしてしまうことはありえないのである。

  • とにかく経済的にロシアは詰んでいる

ロシア連邦崩壊の一番のトリガーはこれなのかもしれない。そもそも、石油や天然ガスくらいしか対外的にはシノギがなかったのに、それを封じられたのだから、いずれはロシアは経済的に崩壊するのである。金の切れ目が縁の切れ目で、さすがにロシア国民もおとなしくお上の言うことをを聞き続けないであろう。これは、ソ連が崩壊した時と同じシナリオである。今はそれがいつ起こるのかを世界が待っている感じであるとも言える。

  • ウクライナの未来もそれほど明るくはない、EU加盟は終わりのはじまり

とはいえ、ウクライナにもそんなに明るい未来が待っていないのは認識しておいた方がいい。最貧国がEUに加盟した場合は、間違いなく悲惨な結果が待っているからだ。優秀な人材はドイツやフランスなど裕福な国に流れ、主権はブリュッセルの官僚に握られ、経済的にも小麦等、ウクライナは比較的価値のある輸出品を生産しているのだが、それでもドイツ車等付加価値の高い商品との貿易を考えると、圧倒的に富を吸い上げられるのは間違いないのである(特に自国通貨を捨てた国の末路はギリシャの様に悲惨なわけで・・・)。

だから、本当は独立国として、地政学的にはEUに近く、政治経済的にはアメリカに近い、個性のある東欧の国として機能した方がいいはずであるが、おそらく今後は狡猾なEUに操られつつ、EUに加盟していく流れになるのであろう。

これは、本当に終わりのはじまりでしかなく、ウクライナの素晴らしかった、人々のきれいな心や、人種差別のなさ、食文化の素晴らしさ、などはゆっくりと時間をかけて薄まっていくのだろう。残念なことである。

  • 勝ちがないのでロシアは今後解体の方向に向かうはず

ということで、どこの共和国とかが蜂起したりするのかは全く想像がつかないが、最終的には厭戦気分がロシア国内に蔓延して、政府が人民の行動を掌握できなくなった時点で、雪崩式に国家が崩壊していくはずである。

その時どうする?というのは、既に秘密裏にアメリカと中国で話し合われていると思われるが、日本としては、北方領土からできればサハリン全域を獲得できれば最高である。まあ、そんなことは中国はもちろんアメリカも許してくれないのだろうが、崩壊する瞬間は今後二度と来ないであろう大チャンスであるから、日本政府や自衛隊には全く期待できないが、頑張ってほしいものである。




あとがき


ということで、1年経ってのまとめはこんな感じになるかと思われます。


たった今、某専門家の一見清廉潔白に見えるが中身のないツイートを見て、怒りに震えたところです。


ウクライナ人が結論を出せる?じゃあ、ある一人のウクライナ人が「俺は最後までロシアと戦うぞ!」と結論を出したところで何の効力もないのは自明でしょう。この専門家はいったい何を言っているのでしょうか。


現在、結論を出すことができるのはゼレンスキー(とその政権のメンバー)とそれをバックアップしているアメリカでしかありません。その仕組みを正しく伝えない限り、ロシア側のプロパガンダが蔓延しているジャップランドで、まず現状を国民が咀嚼することもできないでしょう。ウソを言っているわけですから、かえってノイズになっています。


冒頭に書いたドキュメンタリー然り、再三不満を述べている専門家陣も、内容がプロが提供するものとしては非常に稚拙です。少しでも勇気を出して、本当のことを日本人のために発信してくれる方が現れることを一国民として強く期待し続けようと思います。


今一番大事なのはウクライナという国のために命を掛けて戦い、残念ながら亡くなってしまった方たちの死を犬死ににしないことです。全ての死を意味あるものとして未来につなげていく必要があります。これに関しては、当事者のウクライナ人ではなくても、世界の人にもやれることがあるはずです。それを、一日の生活の中で、一人ひとりが考えて行くことが重要ではないでしょうか。


変に役割をとうに終えているレガシーメディアに噛みついたとしても、正義の見方を装った銭ゲバ野郎を批判したとしても、何がどうなるということはありませんが、この場合、沈黙は同意と同じです。本稿をご覧になった方のうち、お一人でもメディアのおかしさに気づき、現地で恐怖の中、日々暮らしているウクライナの方に思いを寄せて頂けるのであれば、拙文の意味もあるというものです。


*2023年02月26日追記:

専門家筋で「ロシアももちろん悪いけど、ウクライナ汚職ガー」とほざいている人が複数見受けられます。Twitterでもそういう論調は一定数の勢力を有しているようです。

ですが、戦後ほぼ一党独裁の体制を許容し、反対勢力はもっとクソ、その独裁政党の政治家のほとんどは親中かつアメリカのポチ、官僚は中抜きしまくり、一番まともそうな政治家は射殺される、某国に同胞が拉致されたとしても誰も関心を持たない、の国の人間がどのツラ下げて、ウクライナを批判できるのでしょうか?冗談もほどほどにしてほしいです。

ちなみに、近年のウクライナはまだ共産主義時代のような汚職(というか賄賂というかバクシーシ的な慣習というか)は残っていますが、行政をどんどんデジタル化しており、汚職が入る隙間が急激に減ってきています。自分はそれを実際に見て、その進むべき方向の正しさに感心しました。