さて、えらいこっちゃなのである。10月8日の早朝にクリミア大橋が爆発かなんかで壊されてしまったのである。
Wikiによると、クリミア大橋の簡単な歴史はこんな感じである。
- 2006年 元々、19世紀からあった構想を、ウクライナが具体化することを検討開始
- 2008年 ウクライナ、ロシアの二国間で建設計画に合意
- 2010年 ウクライナ、ロシアの二国間が正式に計画に署名
- 2014年1月 二国間の合弁会社が建設開始することで合意
- 2014年3月 ロシアがクリミアに侵攻し併合を宣言、実効支配することに、これにより橋のプロジェクトはロシアの単独プロジェクトになる
- 2018年 開通
ということで、まあ計画させといて横取りというのはどこかのサハリン2とかにも酷似しているような気がしたりするのだが、とにかく、ほとんどロシア側によって作られたインフラだと思ってよさそうだ。
地図はこんな感じ、
この地図を見ると、ケルチ海峡にあるトゥーズラ島を中継地として、大きな橋が建設されたということがわかる。
また、この地図では、いわゆるシーレーンにかかる部分で爆発が起きているということもわかる。なので、現在は公開された動画を見ると、トラックの爆発が主たる原因であるように報道されているが、ミサイルやドローン、そして、船からの攻撃があったのでは、と考えている人も多くいるようだ。
例えば、BBCを覗いてみると、
この記事から、
この記事に飛ばされる。「誰がやって、どこが壊れたの?」という記事だ。
書いているPaul Adamsさんは、ウクライナやロシアの専門家ではなく、むしろワシントンDCに駐在していたりと、そちら方面で活躍されていた海外特派員ということらしい。現在はキエフにいるようだ。
彼の記事をまとめると、
- 爆発したトラックはロシア側の都市クラスノダールからやってきたトラックらしい
- ロシア側の公式発表では、トラックの持ち主はクラスノダール在住の25歳の男性、彼とその親戚が運転していたとのこと(名前も明らかにされている)
- だがしかし、映像を見るに、このトラックは爆発とは全く関係がない
- 映像を見ると、トラックが橋の上り坂を登っている背後で大爆発が起っている
- (Adamsさん曰く)ロシア側でトラックがどうのという話が主流になっているのは非常にうさんくさく、この爆発はウクライナ側の大胆不敵なテロだと決めつけたいという結論ありきの推測になっている
- イギリス軍の爆発物の専門家にきいてみたところ、「トラックが爆発するという現場を何回も見てきたが、今回の爆発はそんな感じではない」というコメントを得た
- 彼曰く、「もうちょっと現実に起ったことと合致する(嘘くさくない)原因を考えるならば、おそらく、水上ドローンのようなものを使ったのではないか」
- 彼曰く、「橋というのはそもそも、耐荷重や横風については耐えられるように設計されているが、下からの爆発には脆弱であり、この脆弱性をウクライナ側は利用したのではないかと」
- 他の映像では爆発の瞬間のほんのすこし前に、小さい船の帆先のようなものが見えているようだ
- また、9月21日にロシアのSNSでナゾの水上ドローンがセバストポリに漂着したことが話題になった
- 前出の軍人さん曰く、「ウクライナが偵察用、攻撃用両方の水上ドローンを持っていることはよく知られている」
- 彼曰く、「これはつい最近計画されてものではなく、年単位で計画された、ウクライナが最も成功させたかった作戦の一つであろう」
- なぜか、当初ウクライナ側はこの件について、はっきりと見解を表明していなかった
- Mykhailo Podolyak(ゼレンスキーの側近、アドバイザー)は、「トラックどうのというのはロシア側がでっちあげた話で、実際はFSB(昔のKGB)と私兵組織(ワグネルみたいなやつ)の内ゲバの結果ではないか」と発言した
- まあ真偽はともかく、戦艦モスクワの撃沈や8月のクリミアの軍用空港の爆発なんかと一緒で、ウクライナ側は情報戦の一環として誰がどうやったのかを色々と考えさせるのがいいと考えているようだ
という感じである。マジで非常に参考になった。
また、これはツイッター界隈で非常に拡散されたツイートだが、
Stop talking about so-called land bridge as there is none. As you see from map there in no continuous two way railway on temporary occupied territories of mainland UA. Capacity to transfer cargo through railways on mainland in limited. pic.twitter.com/JhTE7ALboj
— Mykola Bielieskov (@MBielieskov) October 8, 2022
このツイートを見る限り、クリミア大橋を利用不能にされてしまうと、ロシア→クリミアの補給路(特に鉄道でのカーゴ輸送)は絶たれたと考えてもいいくらい致命的である。
前述のBBCの記事とおり、さきほどプーチンは「クリミア大橋の爆発はウクライナによるテロ」だという声明を出した。
つまり、
- クリミアのためにどうしても必要なインフラをウクライナは破壊した
と断定したわけで、これはいよいよ核を使用する口実になっていくような気がしてならない。
だとしたら、使うとしたらどこなのか。キエフか、一部で言われているリヴィヴなのか(リヴィヴは、中心街が世界遺産になっており筆者的にはそれはありえないと思うが・・・)、それともEUのどこかに一発脅しで使うのか。
ただ一つ、EUでもアメリカでもなくウクライナ側についた国、かつ、落としても国際社会での反発がそんなになさそうな国がある。白人国家でもなく、過去に「戦争を終わらせるために」という理由でアメリカが核を使った国がある。アメリカが自己の核攻撃を正当化しているのだがら、ロシアが「オレだって使っていいだろう」という理屈は(よく考えたらおかしいが)成り立たないわけでもない。また、核が落ちた後も、その国のために、アメリカやEUが反撃を肩代わりしてくれるということもありえない。その国はウクライナのある原発のように、コアが損傷した原発を現在運用している。実験代わりにここに撃ち込んで見て、「次はおまえらだぞ(だから停戦しろや)」と脅すと効果が大きいだろう。なぜなら、ウクライナだけでなく、とばっちりを受けるEUがウクライナ以上に「もういいじゃん」と停戦を求めるだろうからである(この戦争の当初から彼らは一貫して自分たちのことしか考えていない)。なんてことも可能性がないとはいえない。ロシアは少なくとも、アメリカやEUとは本気のケンカはしたくないはずである。だがしかし、切れるカードはそろそろ戦術核しかなくなってきた。対してウクライナは無限にアメリカとNATOから兵器を供給され続けるのである。
さてどうなるのか。油断大敵、そして9条バンザイ、えらいこっちゃなのである・・・。
*2022年10月16日追記:
つい先ほど、中国外務省が在ウクライナ中国人に向けて、「ウクライナから脱出するように」というアナウンスを出したという話が出回っています。また、ロシア軍がベラルーシに入り、ベラルーシ軍となんかやっているという話も出回っています。
ベラルーシがどうのということはキエフをまた獲りに行くということだと思うのですが、さすがにそれは無理筋では・・・。そして、中国政府がどうこうしているということは核使用についてロシアが中国にいちおう仁義を切ったのではとも思ってしまいますね・・・。