リコリスピザみてきたよー&ここ最近見た映画の話2022

ということで、PTA(ポール・トーマス・アンダーソンの略ね)の最新作「リコリスピザ」を見てきたのである。

で、感想は「死ぬほどつまらなかった」だったのである。星は1コでいいと思う。70年代初頭のカリフォルニアの再現は雰囲気、セットともによくできていましたねーって感じなのだが、でもそれだけみたいな。ストーリーは昔のドラクエ並みに1本道で、はしょれば30分くらいのドラマにだって出来るというレベル。PTAは今巷で話題になっているカルト宗教(どっちかといえばアメリカにありがちな感じのカルト)を題材にした「ザ・マスター」という傑作があったので、この先もこういった映画に飢えているシネフィルたちに永遠に期待され続けると思うのだが、リコリスピザに限って言えば、「あれ、もしかして才能枯れた?」と言われてもしかたがない出来だった。ティーンエイジャー特有の切なさをいまいち表現しきれていないし、こういう分野ではソフィア・コッポラが1999年(20年以上前!!!)にヴァージンスーサイズという傑作を出してしまっているので、今この手の映画をやるのであれば、もうちょっと何か踏み込めるものがないと心に刺さってこないのである。


あのジョーカーのホアキン・フェニックスはこの映画でみんながはじめてすごさを実感したかなーと


このシーンね・・・、今見ても非常にいい・・・



この何も起こらない感はいまどきの若い子は理解できるのだろうか?


ちなみに、こういう映画を無理やり面白くしようとするために、やたら物語の背景とか登場人物に隠されたエピソードなんかを解説したがるアホがいるけど、そもそも映画を見るのにそんな知識は全く必要ないし、そんなことをしないと楽しめない映画なんて終わっているのである。また、大抵そういう「説明屋」は説明する体を装い、自分の思想を植え付けようとするので要注意である。そういう説明屋さんの養分になったところでなにも得ることはないので、そんなものに気を奪われないようにして、その分映画館の中で楽しむことを優先しよう。




その他、最近みた映画だと、「ドライブ・マイ・カー」と「チタン」のひどさは既に↓に書いたが、



「シン・ウルトラマン」は学芸会の出し物レベルでひどかったので、レビューを書くことさえできなかった。いつも思うが、こんなゴミクソをありがたがって好意的にレビューしたりツイートしたりしている人間は本当にそう思って発言しているのだろうか?




他には、ありがちなミュージシャンの伝記映画ではあるのだが、フランク・ザッパの伝記映画は面白かった。


アレックスウインターの丁寧な仕事が光ってました

ミュージシャンの伝記映画というは、ほとんど全てがそのミュージシャンが死んだ後に、周辺の人がインタビュー形式で絶賛しまくるのをつなぎ合わせたというのが典型的なパターンなのだが、この映画も思いっきりそのパターンを踏襲しながら、初出の映像や証言がいっぱいありファンなら最高に楽しめる内容だったと思う。





あとは、イラン映画の「英雄の証明」か。これは、めちゃくちゃによかった。今のところ2022年のベストである。



まあ、イラン映画というだけで大抵は面白いのであるが、これはそんな期待を全く裏切らず、しかも、SNSなど世の中に出てきた新しい要素の問題もうまく切り取っていて、「これが映画だよねー!」とスクリーンに話しかけたくなる内容だった。こういうのと比べてしまうと、リコリスピザは2時間の中の密度がスカスカすぎるのである。


ちなみに、この「英雄の証明」は誰がオリジナルの脚本を書いたかで揉めに揉めたそうで、そこらへんはwikiをチェックして頂きたい。





あとは、ウクライナ関係ということで映画館で上映してくれてありがたかったのだが、「ドンバス」も非常によかった。



戦地の様子が市民の目線で(これ重要ね)極めて上手く描かれていて、これも映画の役割をうまく果たしたな、という作品だった。これもわざわざ見る価値があるのでオススメである。





他だと、「わたしは最悪。」も見た。


なんというか、内容がありそうでなにもない話を延々と見せられる感じ。自分が一番苦手な「一般人が精一杯一般の枠を飛び出そうと頑張る」みたいなクソどうでもいいことを見せられる感じが・・・。また、見た目どうこうというのは今どきいけないこともわかっているのだが、どうしてこの手の人間はみんなシャクれているのかも含めて、非常に内容のない映画だった。作品としては決してつまらなくはないので、見る価値はなくはないといった感じか。





というのはともかく、本題なのだが、ギャスパー・ノエ御大の「Vortex」はいつになったら公開されるのだろうか?



日本版のwikiにはこの作品の存在自体が記載されておらず、日本の落日をこんなところで感じるという切ない思いをすることに・・・。


正直なところ、彼の最近の作品は変に過激なだけでそんなにピンとこなかったのだが(まあそれでもClimaxなんかは奇妙な閉鎖されたスペースで起こるクソみたいな出来事みたいな切り口が非常にうまく、印象も強烈に残っているけど)、


今回の作品は「痴呆」という彼にとっては新しいテーマを扱っているようで、見たくてしょうがないのだが、どうやら日本ではまだ公開日さえ決まってない状態のようだ。


まあ、そっちがそんな気なら、ということで、近々で海外サブスクで視聴して9月に出るBlu-rayも購入する予定である。


それにしても、日本色々な意味でマジで終わってますね、という現象の一つがここにも。このレベルの作品ならそれなりに集客もあると思うのだが・・・(Climaxの興行収入が相当悪かったんですかね?)。





そんな感じで今の日本ではまともな映画を映画館のでかいスクリーンで爆音で見るのも一苦労という話に最後はなってしまったのだが(さすがにニューヨークでもロンドンでもこういう状況にはなってないですからね)、まあそんなこと言ってもしょうがないけど、作品のレベルも含めて色々世の中終わってますねーと感じずにはいられないのである。