1年位前から、ちょびちょびと情報が出ていたRoland TR-808のクローンBehringer RD-808がついに2019年のNAMM Showで正式に発表されましたか・・・。
値段は驚異の299ドル。33,000円くらいだ。TR-808の中古相場が25万円~ということを考えると、本当に神様が与えしギアって感じだ。個人の制作環境に与える影響は大きい。2台買う人もそこそこいるだろう。
*2019年12月15日追記:
結局、アメリカでの値段(定価)は524.99ドル(約5万7千円強)になったようだ。Sweetwaterでは、398ドル(約4万3千円強)で販売されており、日本での価格も税込みでだいたい同じくらいの売値になるそうだ。
*2019年12月16日追記:
日本での発売日は2020年1月10日、価格は税込み41,360円に決まったようだ。
しかし、こんなこと言ってもしょうがないけど、Rolandは今日までいったい何をやっていたのか・・・。TR-8、TR-8Sとなんかわけのわからない製品で正にお茶を濁していたのは皆さんのよく知るところで、誰もこんな製品を求めている人はいなかった*1*2。
TR-8/TR-8Sの特に何の罪が重かったかというと、プロのミュージシャンがライブで使い始めてしまったことだった。操作体系はTR-808のままだが、中身はACBという独自の仕組みがあったとしても、所詮PCMなので、そこから出てくるデジタルな音はとても現場で使えるクオリティではなく、ボリュームを上げれば上げるほど耳をつんざくノイズと化すのであった*3*4。
筆者は昨年、ロンドンのカムデンでDJ Pierreのライブを見たのだが、その音質のひどさはとにかくとてつもなかった。そりゃ、TT-303とAcidlab Miamiは確かにTR-8/TR-8Sよりも手に入りづらいけどさ・・・。使う方も悪いけど、オリジナルメーカーがこれ売っちゃダメだろーよ・・・。と、マジでいったい何をどうしたいというビジョンが全く見えないのが最近のRolandである*5。
ちなみに、Rolandは梯郁太郎という一人のマッドエンジニアが創設して人々の生活を変える製品を世の中に出しまくったという点で、アップルやソニーに極めて性質が似ている会社である*6。よく、「TR-808やTR-909が発売されていなかったら、テクノやハウスはどうなっていただろう?」と言われることが多いのだが、そんなものは存在しない。TR-808とTR-909がテクノやハウスそのものだからである。世界中のダンスフロアでかかっている4つ打ちのビートはほとんど全てがこの2つのドラムマシンから派生した音で作られ*7、その圧倒的なクラシックぶりによって30年以上もダンスミュージックというジャンルの進化を止め続けているのである*8。
RD-808の発売は3月を予定しているが、続けてSH-101とTR-909のクローンも安価で発売予定だ。SH-101のクローンはYoutubeにプロトタイプのデモが結構上がっているが、なかなかすごい音を出している。楽器という意味ではこの3つがあればそれなりの曲が作れちゃうので、アマチュア作曲家もいよいよ言い訳ができない状況に・・・。でも、天国以上の状況だよね。Behringerと結婚したいくらいだよ。
Behringerは、去年出したMinimoogの完全クローン「Model D」で皆の度肝を抜いた。
過去のどのクローンよりも音がクリソツで価格は数分の1だったからだ。彼らは本当に革命的なことをやっている。きっと音楽が心底好きなんだろうな。
ちなみに全製品がアメリカのAmazon.comから送料千円ちょっとで買えます。保証とかどうでもいい人はAmazon.comからお安く買うというのも一つのルートです。
さて、我らがRolandがどうしたらいいかというと、これはJupiter-6かJupiter-8を出すしかないのであるが、そんなことできたらとっくにやっているだろうからありえない話なんだよね。だから、これもどこかのいかれたクローンメーカーが出してくれるのを待つのがいいのかな・・・。
日本製のアナログシンセは値段の割に海外製の高いシンセよりも壊れにくくチューニングも安定していて、ミュージシャンから極めて評価が高かった。現在のビンテージアナログシンセ市場の値段の高騰もこの評価、特に海外からの評価の高さ故である。それと比較して現在の3大メーカーの惨状はひどいというかなんというか・・・*9。悲しいオチになってしまうが、ここでも「ものづくり日本」の落日を感じざるを得ないのである・・・。
*2019年12月15日追記:
その後、Rolandお得意の知的所有権関係のツッコミがはいったらしく*10、名前がRD-808からRD-8に変わった。
BehringerはどうやらJupiter-8のクローンも計画しているらしく、しれっとTB-303のクローンも発表した。一連のクローンラッシュの最後はおそらくProphet-5になるのではないかと期待しまくっている人は筆者を含め大勢存在している。本当にワクワクさせてくれるメーカーだ。
*2022年03月16日追記:
↑2年前に書いた希望的観測が本物になった。BehringerはProphet-5を復刻するようだ。名前はProphet-16になるらしい。
自分は、Prophet-5は本家がリイシューしたから、Behringerは手を出さないと勝手に思い込んでいた。本家を買うつもりでいたので本当によかった・・・。
TR-808、TR-909ときて、まさかProphet-5まで安価にリイシューされるとは。後はJupiter-8を待つだけになった。
*2022年08月17日追記:
続編的な話を書いてますのでよければこちらもどうぞ。
*1:これで本当に必要十分ならTR-808の値段が下がってるはずでしょ?
*2:まあ、Rolandがリイシューしてたらこんなに安くは出来なかっただろうけど・・・
*3:いわゆる24/96とかのPCMは音全然良くないっすよ、聴けばすぐわかるのになぜみんな買う?
*4:DSD(SACD)こそが真のハイレゾで自分の耳ではレコードと区別がつかない
*5:せめて、クローンとおもちゃとどっちも出せばよかったのに
*6:まあ、スティーブ・ジョブズはエンジニアではありませんが
*7:なので、TR-707とTR-727をうまく使いこなしたデトロイト勢の凄さもなおさら実感できますね
*8:というか最近のトラップとかそこらへんの音はむしろ依存度を深めまくっている(その救いのなさも時代を映しているよねー)
*9:某K社様のOdysseyまでBehringerに安価でクローンされるらしいっす
*10:バカじゃねーの?