ウクライナ戦争シリーズ14:ホワイトハウスで大喧嘩というコントを見ちゃったよ、という話・・・

「事実は小説より奇なり」とはよく言ったものだが、トランプ劇場というのは想像を遥かに超えた見世物を披露してくれるのである。


ただし、今回は「あー面白かったー」と無邪気に楽しんで済む話ではないのである。トランプには様々な顔があるが、彼の恐ろしい面を見せつけられて、「これは大変な人が世界のリーダーになったな」と思わされたのである。鈍感な自分は今日まで、そこまでの凶暴性や傍若無人ぶりがトランプにあるとは思っていなかったのだ。今までのそういう振る舞いはある一種のビジネスマンとして有利なディールを引き出すためのポーズだと思っていたのである。そして、なぜトランプをそこまで忌み嫌う人が多いのかがやっと理解できたのである(だからといって、カマハリの方がマシ、ということには絶対にならないが)。また、その悪い側面が腹心のJDバンスのサポートによって増幅されているのも、今回思い知ることができた。なかなか危険な人物がアメリカだけではなく、世界をコントロールする立場にあるということなのである。これは世の中にとっては間違いなくよいことではない。


とり急ぎ、何が起こったのかを整理しておこう。


2025年の2月28日(日本時間では3月1日)、トランプ大統領ウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談したが、大統領執務室(Oval Office)で行われた公開形式のミーティングで突然ケンカ腰の激しい討論になり、そのままケンカ別れする形でミーティングが終わってしまったのである。ミーティングの後には、レアアース提供の見返りにウクライナを支援する、という様な発表をする予定だったらしいが、共同記者会見はキャンセルされて、何の成果もなしということで終わってしまったのである。


これが全尺版


こっちは会談決裂後にゼレンスキーがFOXに出て「お前辞めないの?」と訊かれている動画


議論の中身はそのうちジャップメディアでも報道されるだろうが、簡単にまとめると、


・きっかけは、JDバンスの発言で、それに対してゼレンスキーが反論したことからヒートアップすることになった
・ゼレンスキーはバンスに向かって「今まで何度も停戦協定が合意されたが、プーチンは毎回手打ち破りをした、あんたは外交がどうのと言っているが、その外交ってのはなんなんだ」と言った
・バンスは激昂して、「そもそも兵士が足りなくて停戦以外の方策がないのに何を抜かしてるんだ」「おめーは、そもそもアメリカになんの感謝もしてねーだろーが」「それに大統領執務室でこんな侮辱を行うのは失礼すぎるだろ」と応戦
・バンスに空気をいれられた形のトランプも参戦
・以降はめちゃくちゃに・・・


という感じである。トランプは典型的ないわゆる「絶対負けないマン」なので、これで最大の利を得るのがロシアとさらになんといってもその裏で周りの大国が疲弊していくのをのんびり眺めている中国であることが見えなくなってしまうわけで、収拾がつかなくなってしまった。


しかし、これはアメリカ、ウクライナ双方にとって大失敗である。完全に売り言葉に買い言葉の中身の薄い議論だったし、お互いあんなケンカ腰になる必要は全くなかった。


ジャップランドに限らず、メディアやSNSをちょっとのぞいてみたが、相変わらずトランプ大好き派はトランプのいいところを、トランプ大嫌い派はトランプの悪いところをみにくくわめき散らしているだけで、何の役にも立っていない。


素材が新鮮なうちに、見間違えてはいけないいくつかのポイントについてまとめつつ考察してみよう。




1. 議論の前提で、とてつもない侮辱がアメリカ側から行われていた

まずはこれである。

会談の前に、アメリカのメディアの一人がゼレンスキーに「スーツ着たらどう?」と尋ねたのである。そして、そればかりではなく「そもそもスーツ持ってるの?」とも質問しているのである。

これは、とてつもなく侮辱的である。

尋ねた記者は、Brian GlennというReal America's Voiceという極右メディアの記者とのことである。

今回の激しい言い合いの直前にはこの侮辱があったというのはこの件を考察する場合にどうしても外すことのできないポイントである(こういうのをきちんと拾えないというか、拾う能力がないのがジャップのレガシーメディアね・・・)。

ウクライナ側からは先にケンカを売ったのはアメリカと見えてしまうだろうが、別にトランプやバンスが売ったわけではないので、だからと言ってゼレンスキーが侮辱を仕返していいという訳ではない。しかし、トランプの周りにはこんな程度の低いやつがゴロゴロしている、というのは今回世界中に知れ渡ることになったのである。

2. ゼレンスキーの態度は侮辱的だったか

これは結論から言うと、「極めて侮辱的だった」ということになるだろう。他のジャップメディアやSNSでトランプ嫌いのジャップがほざいていることは正しくない。トランプ側にとっては、普通に侮辱的だったのである。

・バンスが指摘したように「ホワイトハウスの大統領執務室で、かつ、メディアの前で」批判的にバンスに反論したこと

は、間違いなく侮辱的だったのである。ゼレンスキーは大きな間違いを犯してしまったのだ。


自分は長年、西側の人たちと付き合ってきたのでよくわかるのだが、彼ら/彼女らのエリート意識というか選民意識というはとてつもないものがあるのである。彼ら/彼女らにとって、西側の、しかも、上流階級の人間以外は対等ではないのである。そもそも、人とも見なされていないレベルで問題外なのである。そこで、あの態度は彼らをヒートアップさせてしまうのに十分すぎたのである。また、バンスは上流階級の出身ではないが、そういう人間こそが、かえって上流階級的な振る舞いを強めに見せようとしてしまうのはこういうケースでは超あるあるである。


それと同時に、差別の少ない東欧の中でもことさら人種にフラットなウクライナ人(自分ははじめてウクライナを訪れた時に逆にびっくりさせられました)としてのゼレンスキーの気持ちもわかる。彼は普通の会話の一つとして、バンスに結果として問いかける形になってしまったのだが、質問をしただけの話であるが、それがまずかったのである。彼は西側のトップ層の頭の中を前もってきちんと理解しておく必要があったし、直接英語を話さず、通訳をバッファとして使って、こういう言い合いになるのを避ける手もあった。


自分もゼレンスキーの英語を聞いていて思ったが、英語を母国語としている人には今回のゼレンスキーの英語は攻撃的に聞こえてしまったのだと思う。そして、英語を母国語としている人には、「英語を母国語としてない人が話す英語」というのを思いやる能力はないのである。


とにかく、ゼレンスキー側はこういう事態になってしまうのを、例え彼が言っていることが正論だったとしても(言っていることの中身は全く間違ってなかった)、避けるべきだったのである。今までがうまくいっていただけに、こうなってしまったのだろうか。

3. バンスが言っていた感謝とは

この点についても言及しておいた方がいいだろう。

彼が言っていた感謝にはおそらく2つの種類があって、

  • 1つ目は、ゼレンスキーが今日表明しなくてはいけなかったアメリカやトランプ/バンスに対する感謝
  • 2つ目は今までのアメリカの継続的な武器支援に対する感謝

であって、おそらくバンスは2つ目のアメリカが行ってきた支援に対しての、ゼレンスキーのクレクレ的な態度に対して以前からずっと不満をつのらせてきたのだろう。

それがあのタイミングで爆発した、ということである。

これも前もってゼレンスキーが対策しておいてもよかったと思う。今までミサイルだけではなく、ジェット機もタダでよこせと主張して、それが通っていたわけだが、それと同時にそういう支援というよりは、それに対するゼレンスキーの態度をよく思わない人間が大勢いたというのを軽視するべきではなかったのである。





とにかく、なかなかに今後大変なことになりそうなのである。


噂では、トランプはモスクワに赴いて、ウクライナなしで停戦についてプーチンと話し合うことになっているらしい。中国の人もこの会談に加わるという話も出ている。もう一カ国、某参戦している国の人も・・・。


イギリスやフランスの反応もまだ明らかにはなってがいないが、彼らも所詮は西側のビジネスマンである。欲しいのは停戦後の復興の過程での利権だけである。ロシアが西側に攻め込むことなどあり得ないし、もっと言うと、西側はロシアの石油か天然ガスがのどから手が出るほど欲しいのである。


また、アメリカ政府としてはゼレンスキーの辞任を求めているという報道も既に出ているが(ミーティングの後にゼレンスキーがFOXに出演してこの件について直接質問されていた)、有力な代わりがいないのが現状だと思う。候補としてはやはりザルジニーになるのだろうが、そうしたところで何がどう変わるというのか。現段階ではゼレンスキーの支持率はウクライナ国内では高いし、誰を立てたところで、ロシアがウクライナの提案を飲むわけがない。


とりあえず現在のラインで停戦しておいて(これはクルスクどうするの?って話に絶対になる)、イギリス軍とフランス軍を最前線にはりつけることでお茶を濁すのか?、それともそれ以上に何かいい案はあるのか?、そもそもアメリカは停戦したら、ロシア側からレアアースをもらうのではないか?(なぜならロシアが占領している地域にしか基本レアアースなんかない)、などなど、クリアにしなければならない問題は色々ある。よく考えたら、ヨーロッパの大国の一つドイツは、元々ロシア寄りである。もし、アメリカがウクライナ問題から離脱したら、ヨーロッパでまとまって問題に当たることがそもそも可能なのか?


なんだか、第三次世界大戦(これは英語話者の間では大ゲンカに対する比喩表現として結構頻繁に使われる)が現実に起こりそうな匂いを感じる今日この頃である。そして、次に同じ様に西側のビジネスの道具に使われたあげく捨てられるいいネタになる都合のいい国といえば、それはこのジャップランドに他ならないのである。今回の件を他人事として見るのは危険すぎる。


ちなみにロシア側はお祭り騒ぎ的な反応を素早く見せているが、例えばメドベージェフのXのポストはこんな感じである。

「イキりきった豚野郎がやっとまともなお仕置きをホワイトハウスでくらいやがった、そして、トランプさんは極めて正しい、ウクライナの政権は第三次世界大戦をネタにギャンブルしようとしている」


とのことである。トランプとの呼吸はバッチリすぎて怖い。


それでもトランプはカマハリよりも1那由多倍マシというのは間違いないが、本当に危ないやつに世界の舵取りをやらせているというのが映画の中の話ではなく現実だというのは、改めて考えるとすごいことである。日本の腐れメディアや無能識者の1ナノミリたりとも芯を食ってないリアクションを含めて考えても、なんだかなーという感想しか今のところは出てこないのである。ここからソフトランディングは可能なのだろうか?それとも、この流れのまま、ほぼロシアの要求を丸飲みで停戦が行われて終わりになるのだろうか。