上海電力の件がまあまあ盛り上がっているのである。
現在は、いわゆる「百田グループ笑」vs「橋下徹とその仲間たち」のバトルになっており、
- 「百田グループ笑」の主張
「国民の生活のために最も重要なインフラの一つを外資に買い漁られまくる、しかも中国企業に。その手助けをしてどうする?政治家としてそんなことしていいと思ってんの?しかもあんたが作った上海電力スキームは大阪を皮切りに全国に増殖中よ?」
というのと
- 「橋下徹とその仲間たち」
「入札を含めた全ての公的な手続きに違法性もなければ違法である証拠もない。いったい何が問題なの笑?」
というのとで、そもそも論点が噛み合ってすらいないのをどちらの陣営も指摘することさえなく、どちらも自分の言いたいことをがなり立てているだけ(さらに徹は人間としての品性に欠けているので相手の人間性にフォーカスして罵倒中)で、野次馬としてはこれが日本の大人のレベルなのかと悲しくなるばかりである。某ネットのコメントで見かけた「今のところ登場人物みんなクズ」というのが正解かつ結論なような気もするが、自分的にちょっと気になった現象があったので、記録しておこうと思ったのである。
気になったのは、5月29日にテレ東がYouTubeで公開している日経テレ東大学という番組に維新の松井大阪市長が出演し、この件について初めて公式に見解を述べたことである。
自分はこの番組の内容に強烈な違和感を覚えた(プロレス好きの方ならわかって頂けると思う、プロレスファンはこういう背後の伏線を楽しむのである)。ひろゆきの「何が具体的にまずいんですか?」という問いに松井市長が「それが僕はわからない」というやり取りは前もって綿密に打ち合わせされた地上波的な演出に感じたのである。地上波ノリをYouTubeに持ち込むとこうなってしまうのかーと、そして、番組としてもそもそもこのやり取りをやりたいがために番組を用意した感がアリアリなような気がした。彼らお得意の印象操作である。
ひろゆきはこの番組を皮切りにお得意のTwitterでも小暴れを開始しており、その内容は橋下徹と同じで「なんの違法性もないのに何が問題なの?」という一点張りである。
テレ東といえば、イコール日経新聞であり、イコール親中であるわけだから、その背景を加味すれば、この印象操作に不自然さは全くないというか、逆に日々テレビの中では繰り返されていることである。だからこそ、その手法をYouTubeに持ち込んだところに自分は違和感を覚えた。
また、番組ではひろゆきとその相方(こいつはなんか知らんがレッドチームのテレビでゴリ押しされてる気持ち悪いやつ、特にメガネが気持ち悪い)には、「維新という政党はよくやってるよー、俺たちは評価してるよー」とも言わせている。なので、全体的には「百田グループ笑」によって若干受けた維新の党に対するダメージを救済している感じだった。テレ東も維新も親中なので、このタイミングでひとまず助けてあげたのだろうか。それとも維新が頼んだのか。
また、もう一つ、偶然なのかほぼ時を同じくして、ジョリーという元大阪市職員を名乗る方が5月31日に「上海電力問題について(元大阪市職員による考察)」という文章をnoteに公開した。
その後、新たに2つの記事も追加され、3部作になっている。
この記事が機になったのかは知らないが、松井市長だけではなく、吉村大阪府知事もTwitterで本件について言及をはじめている。
上海電力の件、松井さんが正式に発信されたので、僕も情報とるようにします。僕は橋下さんの後継で大阪市長をやりましたが、記憶の限りで、上海電力が話題になったことはありません。「副市長案件」の副市長は田中さんだと思いますが、僕の時代も副市長、現在副知事をやってくれてます。聞いてみます。
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) May 31, 2022
ちなみに、松井市長にいたってはこの全く素性のわからないナゾの人物のnoteの記事を潔白の主張の一つとして引用している(吉村知事もこのツイートをリツイートしている)。
咲洲メガソーラーと「副市長案件」について【山口さん、間違ってますよ!】|ジョリー @JImpala4 #note https://t.co/NVEXTodJsS
— 松井一郎(大阪市長) (@gogoichiro) June 1, 2022
こんな今のところ架空の人物の記事に対しても、それを「橋下徹とその仲間たち」がこぞって「自分たちは潔白です」という理屈のソースにするところにも違和感がありまくる(こういうのって一番ひろゆきが餌食にするようなアクションなんですけどね)。このテレ東からの一連の動きはなんなのだろうか。
また、高橋洋一氏も6月2日に自身のYouTubeチャンネルで「橋下徹とその仲間たち」と同じく「違法性はない」とう旨の主張をしている。
が、それ以上に氏のメインの主張は「自分は一切関係ないよ」というものであった。早い話、走って逃げたわけだ。
氏は2012年から2015年まで大阪市の特別顧問をしていたということを動画の中で自ら話しているが、自分は氏がコロナ禍の際に「私は維新の会の顧問やってますから」的なことを文化人放送局の番組内で発言していたのを記憶している。また少なくとも、百田氏のツイートで現在でも氏が会長をやっている組織が維新の会から年間2,640万の顧問料を受け取っていることが明らかになっている。
松井市長と吉村知事が咲洲の件は副市長案件だと言い出した途端に、髙橋洋一さんもあれはは大騒ぎするような案件ではないと言い出した。入札期間の短さも契約違反の事業遅延もよくあることだ、と。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) June 3, 2022
髙橋さんの会社が、維新から年間2640万円の顧問料を貰ってないなら、素直に聞けたんやけどなあ…
それで「私は一切関係ない」と言い切れるのかには疑問が残る。少なくとも、もらっている金額を考えると上海電力(というかナニというか)と極めて懇意の政党とズブズブのズブの関係だというのは間違いなさそうだ(もちろん、だから上海電力の件も知っていたはずだとはならないが)。
自分はここまでの数日間に起こった流れるような動きに違和感を感じた。口裏合わせやどう対策するのかがメディア対応含めて話し合われたのではないかと。まあ、感じただけなのであるが。
で、そもそもの部分を考えるのが大切だと思うのだが、そもそも維新の会というのは結党当時から堺屋太一がブレーンとして後ろで動いていた政党のようだ。
また、竹中平蔵との繋がりも深いらしい。
堺屋太一もそうだが、竹中平蔵といえば、日本を代表するグローバリストである。氏のポリシーに習って政治を実行すると、インフラだろうがなんだろうが、外資に切り売りしていくのが正解ということになる。維新の会が大阪でやったことは成果が多いし、破産寸前だった府政、市政を立て直したのは評価できるが、ウクライナ戦争以前までは先進国では規定路線として世論のコンセンサスを得ていたと思われるグローバリズム路線は現在、エネルギー問題を機に若干の修正を求められている段階である。その中での維新の会の日本での立ち位置や存在意義は今回の参院選のタイミングで一度考えた方がいいように思える。
ということで、結論としては両グループの主張はどちらも正しいのである。ただし、繰り返すがあまりに美しく整理整頓された形でここ最近披露された「橋下徹とその仲間たち」の反撃は逆にキレイすぎて違和感があるのである。このモヤモヤを感じる人もいれば感じない人もいるだろう。
だがしかし、自分には一つだけあれ?と思うことがある。橋下徹には東京都知事選出馬の噂がなかっただろうか?
以前、この項で書いたように、
東京は世界最大の都市なのである。このメガロポリスを橋下の下に置くというのが彼の背後で蠢いている人々の本丸だったのではないかと。だから橋下を地上波に出演させまくって東京の人間にも認知度を上げる試みが行われていたのではないかと。石原都知事の時に我々が実感したように、都知事の権限というのは極めて強い。日本の総理並みと言ってもいいくらいだ。橋下を使ってこの都市を獲りにきたというのがメインの目的であったとしたら、今回の件は「違法じゃないから何をやってもいいじゃん?」ということにはならないような気がする。というか、他のやり方がいくらでもあるはずで、現在国内各地で横展開されているこの上海電力スキームにこだわる必要など特にないのである。
だからといって「某国が悪い!ひどい国だ!」とがなり立てるのは自分は大反対である。外交というのはそんなもんで、これに対して憤怒するだけというのは大人気なく幼稚である。結果として、東京を獲られたとしたら(東京獲られたら日本は本格的におしまいだと思います)それはケンカに負けただけの話であって、それは今日本で暮らしている日本人の責任でしかないのである。
そんな感じで今回の件には非常に考えさせられたのである。みんな色々やってるなーと。良くも悪くも頑張ってるなー笑と。そんな野次馬的視点でこれからもこの件については注目していきたいと思っているのである。
*2022年06月07日追記:
以前に大阪府知事をやっていた太田房江議員が今回の上海電力の件について、ご自身のYouTubeチャンネルで話題にしています。
非常に興味深い内容でした。
発狂中の当事者たちよりも、こういった距離のある第三者かつ有識者の方の意見が出てきたのはいい流れでしょう(今まではそれぞれの陣営のわけわかんないやつらがわめいてただけだった)。山口さんの動きには様々な意見がありますが、こういった動画が公開されることになったトリガーになったのなら、彼の報道には一定の意義があったと言えます。
*2022年06月11日追記:
関西ローカルの毎日放送(MBS)が契約関係の不透明さについて問題があるのではと報道しています。
まさか地上波でこの問題が扱われるとは、という感じです。これによって「法的に問題はない!」「外資の参入が問題なら国が対策するべき!」という主張は世の中には通りづらくなったのではないかと思われます。この報道が本当ならやってることは少なくとも大阪府民に対してはダマシに近いからです。
*2022年06月15日追記:
6月9日にジョリー氏の新しい記事が公開されていたのでした。
ネットの一部では、ジョリー=政策工房という憶測も出ています。鈍感な自分にはそんなひらめきは浮かびすらしませんでした。それにしてもこの文章力や記事の構成力はプロ並みで素晴らしいですね。