どうしようもないを遥かに超えている昨今の日本におけるリイシュー(再発)事情

ずっとずっと書きたいと思っていたことを勇気を出して書いてみるのである。だがしかし、事実を書いているだけで絶望的な気分になるくらいネガティブな内容になってしまうので、今まで何度も書こうと思ってもあえてやめていたテーマなのである。


そんなわけで、


以下、救いようのないネガティブな話が続きますので、日本の音楽業界やそれを支えるリスナーについての事実に目を向けたくない方は読むのをやめることを強くおすすめします。






・V/A - Somewhere Between


今まで、悪口と取られかねない事をあえて書くのもなーと思っていて(特に最近の日本人って字が読めないし、読めても内容理解できないしで)、書かなかったのだが、やっぱり書いとかなきゃダメだなと思わせてくれたのが、細野晴臣なんかの再発で頑張っているLight In The Atticのこのコンピの発売を知ったからである。




ついにここまできたかと。ここまでやられてしまったかと。そして今まで数十年、日本の音楽業界人共はいったい何をやってたのかと思わされたのである。彼らに対するあきれの気持ちなんてとうの昔からすでに通り越しているのだが、もはや、彼らに対しては哀れみの目を向けてあげることすらできない。日本人ではない方たち(まあ、コンパイラーのお一人、北澤洋祐さんは在米の日本人ですが)にここまでやられてしまうと、日本の音楽業界の方たちは、存在価値がないとかではなく、それ以上に、リスナー(特にこれから掘っていこうとしている若いリスナー)にとってはどうでもいい不要な価値観を押し付けるだけの邪魔な存在にしかなっていないのである。


Light In The Atticは今までに、細野さんのリイシューだけではなく、グラミーにもノミネートされた「Kankyo Ongaku」や「Pacific Breeze」といった名コンピレーションを出してきたが、ここらへんで紹介されている音はいわゆる「外国人がかっこいいと思う日本の音楽」という意味では、かなりありがちと言ってもいいくらいの選曲だったので、質の高さは今まで日本の音楽業界でクソみたいな仕事しかしてこなかったジャップ野郎共よりはよっぽど優れていいるものの、「あるよねー」と思う程度の域をはみ出ていなかったのであるが(というのも昭和生まれの陰キャはここらへんの音楽は埋もれて溺れるくらい少年時代に聴き込んでいるのである)、今回のコンピに関してはちょっと死角からバットで殴られたくらいのインパクトがあったのである。




特に自分が感心したのは、R.N.A. Organism(阿木譲のVainityにいたアーティストです)を入れてきたところで「こんなものをコンピに入れて成り立つのか?」と思ったのだが、選曲のセンスがいいので十分に成り立っているのだ。他の曲も十分に狂っていて、とにかく、選ばれている曲はジャップが大好きな「なんかアメリカとかイギリスのかっこいい曲を丸パクリして、ちょっと日本風にしただけ(まあ、ほとんどはただの丸パクリなんですが)」という曲ではなく、「世間とうまく折り合いをつけるのが苦手な人が作った、全くヒットしなかった曲」ばかりなのである。


今のところ、おそらく日本よりは耳のいい人の割合が多い海外のリスナーの間でも、「Kankyo Ongaku」や「Pacific Breeze」以上の評価や人気を博することはないだろうこのコンピがどう評価されるかは非常に興味のあるところであるのだが、そんなことより、選曲のすごさやみんなが同じ方向を向いてしまうジャップたちをあざ笑うかのような、この辺境音楽のコンピとしての完成度は素晴らしいものがある。繰り返すが、今まで日本の音楽評論家やレコード会社の人たちはいったい何をやってきたのだろうか?


リイシュー関係の悲惨さはこれだけではないのである。次の例も見てみよう。




・ジャズ


ジャズの再発も相当ひどい。簡単に言うと、「究極のジャップジャズはことごとく海外の名門再発レーベルがリリースしていて、その他の単にレアなだけなゴミ、もしくは、二番手、三番手的な内容(であればまだマシかもみたいなのばっかり・・・)の作品を日本のレーベルが再発している(そして、それは海外から華麗にスルーされている)」のである。


特に、圧倒的なコンパイル力を誇るBBETony Higgins and Mike PedenというコンビがリリースしているJ Jazz Masterclass Seriesという
シリーズは内容、レア度ともに申し分なく、今自分が一番楽しみにしているシリーズである。

現在は、第3期の発売が始まっており、フラッグシップとなるコンピレーション

と、

なんとShintaro QuintetのEvolution

がリリースされている。

他だと、Tachibanaもよかったし、個人的には松風鉱一トリオの「Earth Mother」がイギリスのレーベルから再発されたのにはブッ飛んだ。ちなみに、この松風鉱一関連では、他の作品をジャップのレーベルが(あわてて?)出しているのだが、これが上述したしょぼい現象の典型的な例である。日本人は音楽業界人として生きてきたプロでさえも耳が悪いので、こういう結果を生み出しまくってしまうのである。本当に今まで何をやっていたのか?と思わざるを得ないのだ。




ジャップジャズに関しては、今まで日の目を見ていない作品でも良質なものが多い、かつ、日本のレーベルが実力不足で掘れないため、Mr. Bongo等のジャズ専門ではないが確かな目と耳を持っている人が運営している再発レーベルでも、さくっと良質な作品をリリースしている。


Mr. Bongoから出た山本邦山の「Beautiful Bamboo-Flute」も非常によかったし、そもそも自分はこんなレコードの存在を全く知らなかった。


Hozan Yamamoto With Sharps & Flats – Beautiful Bamboo-Flute – Vinyl LP/CD


まあ冷静に考えれば、日本プレスというのはマジで音が悪いので(これもあまり知られていない事実だったりします、最近は改善傾向にあるらしい、だがしかし・・・)、こういった再発の達人みたいなレーベルがちゃんとした工場でプレスした方がコレクターにはありがたいのだが、あまりにも日本のレーベルはプロの集団の仕事としてはしょぼすぎませんかね?とも思ってしまう。


ジャズのついでにブラジル音楽についてもちょっと触れておきたいと思う。




・ブラジル音楽


ブラジル音楽については、そもそも扱っている日本のレーベルが少ないので思い切り名指しの悪口になってしまうので、具体的な内容については本稿では言及しないことにしたい。ただし、某日本最大のレコード通販屋さんが出してくる再発はどれも超いまいちなような・・・、それを自分のサイトで大絶賛して売るのはちょっと違うような・・・、と日々思ってたりする。どれも、そもそも音楽として内容がよくないのである。


そんな中、たった一つの光明があって、それがSilent River Runs Deepというレーベルから再発されるMono Fontanaの「Cribas」という作品である。これはとても素晴らしいので音楽好きな方には聴いて頂きたい作品である。



いい仕事は正しく評価してお金も落としてあげたいのである。日本のレーベルなのでプレスのクオリティが心配だが、初のアナログ化ということでとても楽しみにしている。


ちなみに、ブラジル音楽の海外レーベルでの再発は、もはやかなり細かいところまで進んでいて、そろそろ終わりかなというところまで来ていると思う。


Arthur Verocaiの1stについては、ついにアビーロードでのハーフマスター盤というのまで出てしまって笑、


Arthur Verocai – Limited Edition Red Vinyl LP


ありがたいことに稀代の名盤をお手頃価格かつ高音質で楽しむ事ができるようになっている。これもその良さにかなり早く気づいていたのは他ならぬジャップ勢だったと思うのだが・・・。


まあ、そんなゴタクはどうでもよくなるくらいの素晴らしい曲がこれでもかと繰り出される名盤なので、ぜひ一人でも多くの人に聴いていただきたいのである。





・某マスタリングが大好きな例の人


リイシューに関しては、もう一つ、これだけは言っておかないとという件があるのである。これも、変な個人攻撃と勘違いする輩が出てくると面倒なので詳細は伏せるが、最近の日本のエレクトリックミュージック関係の再発には、お決まりのように某ミュージシャンがマスタリング担当として出てくるのである。そして、そのマスタリングされた音がとてつもなくひどいのだ。自分は彼がマスタリングした盤をきくと気持ち悪くなる(本気で体調が悪くなる)ので聴かないというか聴けないのである。それに、そもそもどう考えてもオリジナル盤より音が劣っているのである(さすがにこれはまずいでしょうよ、というか、こんなことさえジャップは判断つかないの???)。正直、この問題はスルーできないくらいの問題なのであるが、自浄能力の低いジャップ、かつ、耳の悪い人が多い業界、ということを鑑みるとこの問題は少なくともあと10年は続いてしまうと予測される。


ファンが多いグループというか人なので、名前を入れれば作品が売れるというのはマーケティングの手法として理解できなくもないが、とにかくあの気持ち悪い音像はいったいなんなのだろうか?彼はそもそも何をしたいのだろうか?彼によって、数々の世界に誇れる名盤がボッコボコにされてしまうのが、あまりにも残念&不憫でならないのである。できれば、一切足を洗って頂いて、今後はクソみたいなソロ作の制作に専念して頂ければと強く思うのである。




・終わりに


ということで、インターネットの時代だから買う前に試聴できるし、輸入盤も普通にアマゾンで買えるしで、そもそも日本の音楽業界なんてなくても誰も困らないのであるが、日本のミュージシャンたちが心血を注いで作ってきた音楽に対して、それでほんとにいいの?と思うことが最近多すぎるのである。そして、問題はそれを変に支えてしまうリスナー層にもあったりするのが、この問題の難しいところである。


というのも、日本の音楽ファンというのは9割くらいがただの「山下達郎とスティーリーダンの熱狂的なファン」であるので、その他のファンにはあまり価値がないというのも、問題の根底にある事実である。でも、その人たちにも最近の音楽業界はきちんと訴えかけることができてないような・・・。


とにかく、2021年もこんなどっちらけな状態が続くのは間違いないのである。そして、クソみたいなチョイスの再発と、「XXXの名盤ベスト100」みたいなクソみたいな企画(さすがにもういいんじゃないですかね?)が、世の中に日常の当たり前の光景として溢れ続けるのであろう。


だから、純粋に良質な音楽を愛してやまない人は、意識的にこの悲惨な現状から目を背けて、海外の優秀な掘り師たちの仕事を楽しむようにすればいいのだと思う。この日本と海外の実力のあまりの違いはなぜ発生してしまうのかということを考えると、結局、これも没落中の日本という国における現象の一つでああるからなのだろうか?それとも、(他民族と比較すると)判断力が悪く、どれが素晴らしくどれがダメかを目利きできない民族的なDNAの欠陥があるのだろうか?そんな結論のない命題を考えてはもやもやしてしまうだけなのが、この救いのない話のエンディングなのである。