「ものづくり」の正体1:GAFAの時代とものづくり編

日本という国の2019年現在の立ち位置みたいなものをちょっとだけじっくり考えてみたいと思っていた。日本は本当にくたびれ、落ちぶれ、いわゆる欧米*1よりも劣った黄色いサルが空回りしているだけの価値のない国なのだろうか?


日本のマスコミというかメディアというか、その論調は生まれてから50年くらい注視してきたがあまりに的外れで、あまりに稚拙で、ジャーマンテクノもびっくりのゴリゴリ&永久ループだったりしてなんの参考にもならない。正直、便所の落書きの方がずっとマシである*2。残念ながらジャップとして享受できるその分野のクオリティは悲惨以下であり、学のない自分みたいな人間でもある程度は自分で考えて判断しないと気づいてからではもう遅いみたいな状況が社会から押し付けられているのが現状である(面倒くさい&つらいけど・・・)。オレみたいなあっち側の人間からすると、パヨク*3も愛国老人*4もマジでウンザリで、そういう表にチラチラ出てくるやつらの意見や思考も同じ日本人としてアホとかいうつもりはないのだが一切全くクソの役にも立たない。


ということで、今回からテーマを分けて、何がどうなっていて、何が問題で、何に希望を見い出せばいいのかを考えてみたいと思う。


1回目のテーマには日本人が大好きで誇りにしているであろう「ものづくり」という言葉を選んでみた。この言葉の取り上げられ方には、長い間コンピューティングやネットワーキングの現場にいた自分には相当の違和感があったからだ。




果たして日本は未だにものづくりの国なのか?間違いなく日本はものづくりの国である。職人の国と言い換えてもいいだろう。日本で作られた電化製品をはじめとした工業製品や、刀などに代表される伝統工芸品のクオリティーはいまさら説明するまでもなく世界に自慢することができるほどの超高品質である*5。「ものづくり」という言葉の響きには、単純な品質の高さなどの優位点だけではなく、日本人のDNAといってもいい仕事に対する勤勉さや生まれつき与えられた器用さ等、民族としての誇りが凝縮されている。


そんな美しい言葉を汚すつもりはない。ただし、2000年前後を境に日本の外側が急激にドラマティックに変わっていったという事実があり、自分はそのくらいから「ものづくり」というのは国民の目を現実から背ける(そむける)言葉として意図的に悪用されている危険さを感じていた。ものづくりは今では日本の弱点を的確に表す言葉になってしまっていると思うのだ。


もう少しはっきり書こう。「ものづくり」は「物しか作れない」という意味なのだ。具体的には「日本人はハードウェアしか(高品質な物が)作れない」イコール「日本人には(まともな)ソフトウェアは作れない(書けない)」という現実や結果が存在しているのである。


こう書いてしまうと「日本にはTRONがあり、Rubyは国際的に広く使われている言語で~」と反論が殺到しそうだが、そういう世界に誇れる的なソフトウェアは正直なところ偉大なる日本の割には本当に数えるほどしか存在しないのが悲しい現実なのである*6


つらいかもしれないがもうちょっと現実をちゃんと見て判断しよう。インターネットがはじめて開発されたのが1969年、1990年代には一般的に普及し始め、インフラとしてかかせないものになってきた*7。インターネットは人間が誕生して築き上げてきた文明社会の中で最大の革命的な発明だろう*8。これによって、国の国境があいまいになり人間の価値がフラット化することになったのだ*9


それから2000年前後にGoogleAmazonという決定的なサービスを提供する企業が現れて、世の中を支配しはじめた。さらに、Twitterが2006年、iPhoneが2007年に発表され、日本の企業の今までの考え方や仕事のやり方が通用しなくなってきていることが鮮明になってきた。その後はインターネットの世界での大きな変革というのはInstagramくらいしか出てきていないのだが*10Instagramごときにさえもはや対抗できるサービスを打てる日本の企業はいなくなってしまった。


日本の企業もGAFAの一つになることを全く目指さなかったわけではなく、それなりに頑張っていた。例えば、Facebookがあんなに市場を支配する前に日本にはmixiというSNSサービスがあり、ほとんどの人が使っていたし、それによって友達ができたり結婚したりする人がいるくらい広く普及していた。日本だってこの頃までは、世界に通用する(しそうな)サービスを開発できていたのだ(ただ、mixiは本稿で主張している「ものづくりしかできない」という部分で衰退したわけではなく、なぜかサービスを改悪し続けることで、客離れを自ら誘発し、ユーザーの不満がmaxになったタイミングでFacebookが出てきてこぞって乗り換えられた*11、という別の歴史がある)。


そんな歴史の中で、日本のものづくりの挫折として大きな出発点になったのはなんといってもクラウドサービスだろう。自分はサービスを提供している側からも、使うユーザー側からも日本のクラウドサービスの歴史を起ち上げから見てきたが、Amazonクラウドサービス(AWS)と比べると熟練の大人の職人と四歳児くらいのレベルの違いが最初からあった。簡単に説明すると、日本のクラウドと名乗っていたサービスの多くは単なるホスティングサービスがほとんどだった。それしか作れなかったのである。AWSの基本的な実態はフロントエンドのサーバー群とそれのストレージとして極めて抽象的に利用できるS3というサービスの組み合わせである*12。そしてその構成をベースに500以上のサービスを組み合わせて使うことができる。弱点は当時からそうだったが課金が従量制というくらいしか見当たらない*13。日本の企業は頑張ってクラウドサービス的なものをブームにのって提供したのだが*14、物しか作れなかったので、サーバーというハードウェアをクラウド化(抽象化)するソフトウェア部分の作り込みをできなかったのである*15


もちろん負けたのは日本の企業だけではない。あの、Googleでさえクラウドサービスの分野ではAWSに目も当てられないほどボロ負けしている。AWSにかろうじて対抗できているのは、若干キャラ付けは違うがマイクロソフトのAzureだろう。Amazonのジェフベゾスは抽象化していくコンピューティングの未来をいち早く予想し、優秀な人材を集めて、唖然とするようなスピードでAWSのサービスを充実させていった。その結果、ただの本のオンラインショップが時価総額世界一の企業になったのである。

(ちなみにAmazonの場合、本業はオンラインショップで、副業(!)がAWSである。そして、どちらでも無敵の地位を誇っている)


繰り返すが2000年前後からGAFAが世界を支配した今日まで、このインターネット界隈の分野の歴史は日本のものづくりの敗北の歴史とも言うことができる。楽天はいつの間にかAmazonに大きく差を開けられ*16クラウドはさくら以外は基本的に死に体というか討ち死にし*17スマホはいつの間にかiPhoneと韓国と中国に快敗し、ここまで触れなかったが検索サービスでも光の速さでGoogleに蹴散らされた*18


結果、あなたの個人情報はあっけなくGAFAにゲットされ人としての弱みをビッグデータで分析され、的確にマーケティングをかけられ、意のままに操縦されるという危険な世の中になってしまったのである*19。あなたが年収400万円程度なのに、なぜか10万円のスマホをローンで2年おきに買い換えるハメになって、TwitterInstagramになんの取り柄も面白みもない平凡以下の救いのない生活を垂れ流して満足しているのにはちゃんと理由があるのだ。


正直、日本がこのソフトウェアの分野で今から挽回できないにしても、せめて一矢を報うことができるかというと、その可能性は0%だ。だが、いちおう日本人なのでかすかなる望みについて、次の投稿で触れてみようと思っている。


ところで本当にGAFAは世界を統一したのだろうか?実はそうではない。唯一、世界の人口の内、14億人を抱える中国という国だけが、GAFAのカウンターとしての機能を国民に提供できている。Google百度バイドゥ)で、TwitterFacebookは微博(ウェイボー)で見事に置き換えられ、SNSからチャットからオンラインペイメントまでをごちゃまぜにしたwechatというアプリも広く使われている。


「そんな物必要としていない、GoogleAmazonがあれば十分」という人もいるだろう。ただし、本稿で言いたいのは「やらなかった」と「作れなかった」というのは全く違うということである。日本は中国と違って作ることすらできなかったのだ。


そんなことを今さら言ってもしょうがないかもしれない。ただ、「ものづくり」という言葉に溺れるのは危険であるのは間違いないと思う。日本の製造業におけるものづくりのクオリティーには誰も異論を唱える人はいない*20。だがしかし、繰り返すがここ20年の間に大きな産業の構造変革が起き、ものづくりの重要性はどんどん低下していっているのだ。そして、そのトレンドは今後も終わることはありえないのである。

*1:繰り返すがそんなものは存在しない

*2:今回のNGTの騒動もそうだが一番正確で詳しい情報がどこよりも早く出ていたのは5chで、いつものことである

*3:なぜにリベラルと親中親韓が同一なものになっちゃうのかはきちんと納得できる説明できる人っているのかな?

*4:例え日本がすごい国だろうとテメーらはすごくもなんともねーよ

*5:最近は包丁の切れ味が外国の方にやっと発見されたような

*6:ちなみにかのSkypeエストニアで開発されたんだよ、これ豆な

*7:この時期が一番なんでもありで面白かったよね

*8:なんとまあ幸せな時代を生きることができたものである

*9:これに大きく寄与したのはインターネットの匿名性という性質で、「本名で何も言えないやつは卑怯」とかテレビで言ってるやつ(専門家だったりするのが驚きだが)は単なる無知の鬼タワケである

*10:正直、今までの各ムーブメントのインパクトからするとInstagramは豆鉄砲か吹き矢レベルである

*11:別に退会までする必要はないのになぜか乗り換えどころか乗り捨てられまくった

*12:無停止でディスクの容量を伸び縮みさせることができたりするのだが、未だにこんなことできる日本のクラウドサービス(自前で開発したもの)は存在しない

*13:いくら請求されるかわからないというサービスはやはり手が出しづらいものだ

*14:今振り返ると最初期にあの変なモバイルゲームのバブルで調子こいてしまったのも結果としてまずかったのかなと

*15:これだけ何十年も業界で働いてきた人がいっぱいいるのに誰も何もできなかったっていうのもよく考えたらすごいよね

*16:地味にヨドバシが対抗できてるのは世界的にみても相当すごいことだ

*17:誰も白状しないが黒字のクラウドサービスなんてなかったんじゃないだろうか、ほぼ全員大赤字でこれでがっつりと企業の体力を削られ今のリストラブームに繋がっているのかと

*18:検索だけは国主導で粘るべきだったと思っている

*19:狩猟民族って怖いですねー

*20:こういう時に「ソニータイマーは?」とか空気の読めないこと言うやついるよねー